本記事では、よく耳にする「悪い事の後にはいい事がある」という言葉を、スピリチュアルを理由に断定する風潮に対して“批判的な視点”から取り上げます。
また、この言い回しがどのように広まり、なぜ多くの人が無意識に信じ込んでしまうのか、その背景にある心理的な要素にも触れながら、読み手がより冷静に情報の性質を判断できるよう意図しています。
さらに、本稿は特定の行動や判断を推奨するものではなく、スピリチュアル情報との向き合い方を自分自身の基準で考えるための材料としてお読みいただければ幸いです。
「悪い事の後にはいい事がある」は本当なのか？
日常の中で悪い出来事が続くと、人は不安になりやすいものです。
そこで誰かに
「悪い事の後にはいい事があるよ」
「運気が変わる兆しだよ」
と声をかけられると、ほんのひととき心が軽くなることがあります。
ただし、こうした言葉の多くは“スピリチュアルの名を借りた単なる励まし”であり、実際に裏付けとなる根拠があるわけではありません。
さらに言えば、こうした言葉が広まりやすい背景には、人が不安を感じたときに“理由づけ”を求めてしまう心理があります。
悪い出来事が続くと、私たちは
「なぜこんなことが起きるのか」
「これには何か意味があるのでは」
と考えやすくなります。
その隙間に、もっともらしい“スピリチュアル的な説明”が入り込んでしまうのです。
スピリチュアルの世界には幅広い情報がありますが、そのすべてが正確な理解や検証に基づいているわけではありません。
ときには、誰かの主観的な体験や思い込みが“真実のように”語られ、それが拡散されてしまうこともあります。
こうした情報の混乱を生む原因のひとつが、断定的で強い言い切り表現です。
「絶対にこうなる」
「これは宇宙の法則だ」
といった言説は耳障りが良く、読者に影響を与えやすいため、真偽とは関係なく広まってしまうことがあります。
本記事では、そのような断定的なスピリチュアル言説がなぜ問題になるのか、そしてどう向き合うべきなのかを、批判的でありながら冷静な視点で整理していきます。
「変化を促すメッセージ」や「試練」という説明の違和感
ネット上では
- 悪い出来事は“変化を促すサイン”
- トラブルは“見直すべき課題を示すメッセージ”
- 連続する不運は“あなたへの試練”
といった主張が並びます。
これらの説明は、一見すると筋が通っているように聞こえ、読んでいる側も「そうかもしれない」とうなずきたくなる要素を含んでいます。
しかし、もう少し丁寧に見ていくと、こうした解釈はスピリチュアルというより 自己啓発的な論理の延長 であることが分かります。
そもそも“変化を促すサイン”という言い方は、ネガティブな出来事をポジティブに受け止めるための心理的テクニックに近いものです。
人は辛い状況に直面したとき、その出来事に何らかの意味づけを行うことで心のバランスを保とうとします。
そのため、「これはあなたの成長のための出来事です」と言われると、現実が変わるわけではなくても、自分が状況に耐えやすくなることがあるのです。
この心理的作用が、“スピリチュアルの真実”として語られる背景にあります。
さらに、「連続する不運は試練」という主張も、よくよく考えると根拠には乏しく、誰が試練を与えているのかという点に明確な説明はありません。
神的存在なのか、潜在意識なのか、宇宙の意志なのか――語る人によって主張がバラバラで、一貫性がありません。
それを“スピリチュアルの真理”として扱うには、あまりにも曖昧すぎます。
つまり、これらの主張は「その方が前向きに生きやすい」という心理的メリットはあっても、スピリチュアル的な根拠が十分に伴っているわけではありません。
むしろ、心情的に寄り添うための言い回しが独り歩きし、あたかも真理であるかのように流通していると考えた方が自然です。
誰かがあなたに試練を与えている、という考え方には科学的・客観的な根拠はありません。
それを“宇宙が仕組んだ必然”のように語るのであれば、むしろ内容そのものをいったん疑って冷静に捉えた方が健全でしょう。
「成長のサイン」という説明も実はスピリチュアルではない
「あなたをワンランク上に成長させるサイン」という言い方もよく見かけます。
これも自己啓発の解釈としてなら理解できますが、“スピリチュアル的な真実”として語るのは無理があります。むしろ、この表現は「困難を前向きに捉えるための枠組み」としては機能しても、スピリチュアルそのものを説明する概念とは言い難いものです。
そもそも“成長”という言葉が象徴する「上に行く」「レベルアップする」という感覚は、人が社会生活の中で便利に使うために生み出した考え方です。
スピリチュアルの領域においては、出来事が上か下か、優れているか劣っているかといった序列は本質的には存在しません。
宇宙的視点においては、すべての現象はただ“起きている”だけであり、そこに価値判断を持ち込んでいるのは私たち人間です。
人間がつくった「上」「下」「成長」といった尺度は、スピリチュアルの世界の本質とは関係ありません。
出来事そのものをどう捉えるかはあくまで個人の主観であり、宇宙がそう仕組んでいるわけではありません。
さらに言えば、同じ出来事であっても、人によって「成長のチャンスだ」と感じるか「ただ辛いだけだ」と感じるかはまったく異なり、その差は“宇宙の意図”ではなく、個々人の価値観や経験の影響によるものです。
つまり、「成長のサイン」という言葉は人が前向きになるための便利な比喩ではあっても、スピリチュアルの真理であるかのように断定するのは適切ではありません。
出来事に意味を付けているのは自分自身であり、その意味づけがポジティブに働くかどうかもまた、自分の解釈次第に過ぎないのです。
「運気の変わり目」という言葉の曖昧さ
悪い出来事が続くと「運気の変わり目」という言葉が使われることがあります。
しかし、良いことと悪いことが一定のバランスで起きるという根拠はなく、「悪い事の後には必ずいい事が起きる」というモデルは現実を正確に反映しているとは言えません。
そもそも「運気」という言葉自体が非常に曖昧で、明確に測定できる指標があるわけではありません。
多くの場合、人が抱える不安やストレスに対して“理由づけ”として使われる概念に過ぎず、それ自体が科学的に説明されているものではありません。
悪い出来事が続いたときに「これは運気の変わり目だから」と言われると、なんとなく納得してしまうのは、人が出来事に意味を求める性質を持っているためです。
また、「運気の変わり目」はしばしば“これから好転する兆し”として語られますが、それが本当に起きるかどうかは出来事そのものとは別の問題です。
現実には、良い出来事が続く人もいれば、悪い出来事が長く続いたと感じる人もいます。
人生の流れには個人差があり、そのすべてを“運気の波”などの単純なフレームに当てはめることはできません。
さらに言えば、運気が変わるかどうかを“出来事の起こり方だけに依存させる考え方”もまた危ういものです。
同じ出来事が起きても、前向きに捉える人は「運が回ってきた」と感じ、悲観的に捉える人は「まだ悪いことが続く」と思うだけです。
つまり、運気という言葉が示すものの多くは、実際の出来事ではなく“その人の解釈や状態”による部分が非常に大きいのです。
生涯ずっと幸運に恵まれる人もいれば、悪いことが多いと感じ続ける人もいます。
人生と出来事は単純な法則に当てはめられるものではありません。
「宇宙の法則」説の誤解
「悪い事の後にはいい事があるのは宇宙の法則」と言い切る人もいますが、宇宙には善悪の区別は存在しません。
善悪・優劣・成功・失敗といった概念は、人が生活の中で使うために作り出したものであり、宇宙がそれらを基準に動いているわけではありません。
そもそも宇宙は物理法則に従って動いており、人間が抱える感情的な価値判断とは無関係に成り立っています。
宇宙のスケールで見れば、私たちの日常の出来事はあまりにも小さく、そこに「良い」「悪い」という人間的な意味を付けること自体が本質から外れています。
それにもかかわらず、宇宙の仕組みと人間の価値観を安易に結びつける表現が使われるのは、スピリチュアルの世界で“もっともらしい説”として繰り返し語られてきた歴史があるからです。
また、「宇宙の法則だからこうなる」と断定する言説は、聞き手に強い説得力を与えやすいという特徴があります。
曖昧な現象でも、宇宙という壮大なスケールの言葉が添えられることで“深い真実があるように錯覚”してしまいがちです。
しかし、実際にはその多くが具体的な説明を伴わず、ただ雰囲気で語られているに過ぎません。
宇宙が人間の生活上の善悪判断に沿って出来事を調整してくれる、というのはスピリチュアルを理由にした“思い込み”であり、事実として語るべきものではありません。
スピリチュアルを楽しむ自由はもちろんありますが、宇宙のスケールと人間の価値観を混同してしまうと、判断を誤る危険性もあるため注意が必要です。
出来事に意味を与えているのは自分自身
出来事自体には良い悪いといった意味はありません。
その出来事をどう解釈するかを決めているのは、常に自分自身です。
これはスピリチュアルの領域に限らず、心理学や日常の生活感覚においても一貫して語られる考え方であり、私たちが現実をどのように受け止めるかは、そのときの心の状態や価値観、置かれている環境によって大きく変化します。
たとえば、同じ出来事が起きても、心に余裕があるときには「まあそういう日もあるよね」と流せる一方、疲れていたり不安が強かったりすると「なんでこんな悪いことばかり起こるんだ」と感じやすくなります。
つまり、出来事そのものは中立であっても、その意味づけは常に“自分の内側で起こっている”ということなのです。
- 悪い出来事にばかり意識が向く人は、出来事を“悪いもの”として解釈しがちで、日常の中でもネガティブな側面を見つけるクセが強くなる
-
良い方向を見る人は、同じ出来事でも“良い出来事”として受け取ったり、そこから学びや気づきを見つけやすい
さらに、出来事の意味づけには“慣れ”も影響します。
悪いことに意識が向きやすい人は、無意識のうちに「不運を探すクセ」がついていることがあり、反対に前向きな人は「良い側面を探す習慣」が自然と働いています。
この違いが積み重なることで、同じ出来事でもまったく異なる人生観が形づくられていくのです。
「悪い事の後にはいい事がある」と信じることで前向きになれるなら、それは“あなたの解釈がポジティブに働いた結果”です。
ここに宇宙の意図や特別な力が介入しているわけではありません。
あなたの捉え方が変わったことで、現実が以前より明るく見えているだけなのです。
これは決して否定すべきことではなく、むしろ人が持つ自然で健全な心理作用です。
つまり、出来事をどう捉えるかという“内的な選択”が、あなたの経験をどれだけ豊かに、あるいは苦しいものにするかを左右します。
外側の世界が変わるのを待つのではなく、出来事に向ける視線を少し変えてみるだけで、日常の体験は驚くほど違って見えるのです。
おわりに：スピリチュアルに“なんでもあり”は禁物
本記事の内容はスピリチュアル全体を否定するものではありません。
ただし、断定的で根拠のない言説を「スピリチュアルの真理」として受け止める必要はありません。
スピリチュアルは本来、個人が自分自身の内面と向き合うための柔軟な視点を提供するものであり、何かを絶対化したり、特定の結論へ誘導するための道具ではありません。
また、スピリチュアルという言葉が広範に使われるようになった現代では、情報量の増加に比例して“都合の良い物語”や“聞き心地の良い言説”が大量に生まれています。
それらは、読む側の不安や弱さにつけ込むように広まり、場合によっては誤解を深めてしまうこともあります。
だからこそ、自分に届く情報を少し立ち止まって眺め、
「これは事実なのか」
「誰のための言葉なのか」
を冷静に考える姿勢が欠かせません。
スピリチュアルを楽しみつつも、情報の真偽を見分ける姿勢はとても大切です。
誰かが言い切る“都合の良い話”には、適度な距離感を持って向き合うようにしましょう。
スピリチュアルとの健全な付き合い方とは、盲目的に信じることでも完全に拒絶することでもなく、あくまで自分の判断軸を保ちながら、必要な部分だけを静かに取り入れていく姿勢なのです。
免責事項
本記事は筆者の個人的な見解やスピリチュアル的な解釈を含むものであり、科学的・医学的・法律的根拠に基づくものではありません。
特定の行動・判断を推奨する意図もありません。
さらに、ここで述べている内容は特定の信念体系や価値観の優劣を示すものではなく、スピリチュアル情報を読み解くための一つの視点として提示しているに過ぎません。
日常生活や重要な決断に関しては、公的機関・専門家の情報をご確認いただくとともに、必要に応じて複数の情報源を参照し、偏った判断を避けるよう十分ご注意ください。
筆者プロフィール（Hiro）
アナザーリアル運営者。
スピリチュアル情報の“思い込み”や“誤解”を正すだけでなく、読者が安心して知識を楽しみ、自分自身の判断軸を持てるようにサポートすることをテーマに発信を続けている。
アクアヴィジョン・アカデミー公認ヘミシンク・トレーナーとして、これまでに延べ1000人以上の参加者を支援し、初心者から経験者まで幅広い層に向けて実践的なガイドを提供。
さらに、スピリチュアルを過信しすぎる風潮や、根拠のない断定的な言説が広まる現状に対しては、冷静で中立的な姿勢を貫き、健全な視点とバランス感覚を大切にしている。
また、個々が自分の感覚や経験を尊重しながらスピリチュアルと向き合うためのヒントを提示することを使命としている。
